狼たちはさっきから動物の脇腹と脚を攻撃しつづけていた。サディは猛りくるう獣の背後にそろそろと近づいた。獣はばかでかい両腕をめったやたらに振りまわして襲撃者たちを遠ざけようとしている。
そのとき、外科医顔負けの正確さで、雌狼が獣の左の膝の裏の筋肉を牙でひきちぎった。
耳をふさぎたくなるような苦悶の悲鳴があがった――動物が妙に人間に似ているだけによけいそれは気味が悪かった。毛むくじゃらの獣は傷ついた脚をつかんでうしろにひっくり返った。
ガリオンは大きにして柄《つか》の横棒をつかみ、のたうちまわる身体にまたがって武器をもちあげ、毛むくじゃらの胸を刺し貫こうとした。
「頼む!」獣は叫んだ。獰猛な顔が苦痛と恐怖にゆがんでいた。「どうかおれを殺さないでくれ!」
それはグロリムだった。血に染まった雪の中に倒れている巨大な獣がぼやけだして人間にもどったとき、ガリオンの仲間が最後のとどめをさそうと武器を構えて近づいてきた。
「待て!」ダーニクが鋭く言った。「これは人間だ!」
かれらは立ち止まって、雪の中に横たわる瀕死の僧侶をまじまじと見つめた。
ガリオンは無情に、グロリムのあごの下に剣の先をあてがった。激しい怒りをおさえて、かれはひややかに言った。「ようし、わけを話せ――隠しだてはしないほうが身のためだぞ。だれの差し金でこんなことをした?」
「ナラダスだ」グロリムはうめくように言った。「ヘミルの神殿の高僧のな」
「ザンドラマスの子分のか?」ガリオンは問いつめた。「白目のあいつか?」
「そうだ。おれはナラダスに命令されたことをしていただけだ。どうか殺さないでくれ」
「どうしてナラダスはわれわれを攻撃しろと命令